日本に住む20歳以上60歳未満の人は、全員国民年金に加入しなければなりません(国民皆年金制度)。そして、60歳を過ぎると生年月日や加入期間、収入等に応じて、年金を受け取ることができます。
公的年金制度は国民年金と厚生年金の2階建ての仕組みになっていますが、ベースとなるのは国民年金(基礎年金)です。
公的年金には、老後の生活資金となる「老齢年金」の他に、障害者になった時に受け取る「障害年金」(年金Q5参照)、万一の場合に遺族の生活資金となる「遺族年金」(保険Q2参照)の3種類があります。通常「年金」と呼ばれているのは「老齢年金」のことですが、老齢年金を受け取るには10年間(平成29年8月の法改正により、25年から10年に短縮された)国民年金に加入していることが必要です。この期間を満たさないと、国民年金だけでなく、2階部分である厚生年金も受け取ることができなくなります(国民年金保険料を滞納した場合、2年までさかのぼって支払うことが可能)。なお、厚生年金保険料には国民年金保険料が含まれているので、上記受給資格期間を満たせば、厚生年金加入者(会社員や公務員等:第2号被保険者)は国民年金と厚生年金の2つの年金を受け取ることができます。
配偶者が専業主婦などの場合、夫が厚生年金に加入していれば、妻は夫の厚生年金を通じて国民年金保険料を支払っているとみなされ、実際に払っていなくても国民年金を受給することができます(第3号被保険者)。夫が会社を退職し厚生年金の被保険者でなくなったときに妻が60歳未満であれば、妻は60歳になるまで自身で国民年金に加入し、国民年金保険料を納める必要があります。すみやかに第3号被保険者から第1号被保険者への「種別変更届」を市区町村の窓口に提出しなければなりません。
なお、同じ専業主婦でも夫が自営業者なら、妻自身も国民年金保険料を納める必要があり(夫・妻ともに第1号被保険者)、将来は国民年金を受け取ることになります。
厚生年金に1年以上加入していると、60歳から特別支給の老齢厚生年金を、厚生年金に1ヵ月でも加入していると、65歳から老齢厚生年金を受け取ることができます。ただし、前者の受取開始年齢は、現在、段階的に65歳に引き上げられています。例えば、今年(令和7年)60歳になる会社員の男性(昭和40年まれ)の場合は、老齢厚生年金も老齢基礎年金も65歳からの受給となります。今後、老齢厚生年金の一部分(報酬比例部分)を受給することができるのは昭和39年4月2日以降昭和41年4月1日生まれの女性となりました。昭和36年4月2日以降生まれの男性、昭和41年4月2日以降生まれの女性は、ともに65歳からの老齢厚生年金を受給することになります。なお、国民年金は原則として65歳から受け取ります。
60歳~64歳までの年金は、「報酬比例部分」と「定額部分」に分かれていて、2つを合わせて「特別支給の老齢厚生年金」と呼んでいます。報酬比例部分は現役時代のお給料に応じて、定額部分は働いた期間に応じて額が決まります。
家計の状況によっては「本当は65歳からしかもらえないけれど、60歳からもらいたい」ということがあるかもしれません。その場合は、1ヵ月単位で年金の「繰上げ」を行うことで、本来より早く受け取ることができます。しかし、「繰上げた月数×0.4%(昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は0.5%)」の割合で減額され、一生その年金額が続きます。また、一度繰上げ受給を選択すると、65歳になる前に障害者になっても障害年金を受け取れなかったり、配偶者が死亡して遺族年金を受け取る権利ができても65歳までは1つの年金しか受給できなかったりという制限がありますので、注意が必要です。なお、繰上げ受給は、老齢基礎年金・老齢厚生年金ともに行う必要があります。
また、「65歳からもらえなくてもいいからもっと金額を増やしたい」という場合には、最高75歳まで「繰下げ」を行うことも可能です。この場合、年金額は「繰り下げた月数×0.7%」の割合で増額されます。増額されることで将来の収支はより安定しますが、繰り下げた間の収支が保てるかどうかは確認しておく必要があります。なお、繰下げ受給は、老齢基礎年金のみを繰り下げる、老齢厚生年金のみを繰り下げる、両方とも繰り下げる、のいずれかを選択することができます。
60歳以降70歳までの間も再就職等で厚生年金保険に加入する場合は、給与の額に応じて老齢厚生年金が減額されます(在職老齢年金)。本来、老齢年金は、退職後の生活資金として支給されるものです。在職老齢年金は「働いて給料をもらっている人なら年金がなくても大丈夫なはず。でも働いているといっても収入が少ない人には、それに応じた年金を支給しましょう」という制度なのです。
在職老齢年金はこれまで65歳未満と65歳以上で、その内容が異なっていましたが、令和4年4月から65歳未満の在職老齢年金の年金支給停止基準が見直され、65歳以上の場合と同じ金額(令和7年度:51万円)に緩和されました。
在職老齢年金について確認しましょう。給料の「総報酬月額相当額」と「年金月額(報酬比例部分のみ)」の合計額が51万円(令和7年度)を超えると、超過した分の2分の1が年金額から減額されます。例えば、「総報酬月額相当額」が43万円、「年金月額」が10万円の場合、合計額は53万円ですので、51万円を超える分(2万円)の2分の1、すなわち1万円が、年金額から減額されます。したがって、在職老齢年金は9万円(10万円-1万円)となり、給料の43万円と合わせて、月額52万円の収入、ということになります。
なお、65歳から受け取れる「老齢基礎年金」の金額は調整の対象にはなりません。
60歳以降も厚生年金保険に加入した場合、70歳までは厚生年金保険料を納めなければなりませんが、納めた厚生年金保険料は将来の老齢厚生年金に反映されますので、厚生年金の受取額は増えることになります。
失業保険は正しくは雇用保険の「基本手当」といいます。老齢年金の目的は「リタイアした方への生活保障」、基本手当の目的は「働く意思はあるのに仕事が見つからない方への生活保障」とその主旨が異なるため、両方をもらうことはできず、どちらか一方を選択しなければなりません。
自己都合等による退職の場合は、退職日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が12ヵ月以上あり、働く意思や能力があるにもかかわらず就職できない状態にある人に支給されます。
基本手当の日額は、退職日以前1年間のうち、最後の6ヵ月間の給料(賞与を除く)を180日で割った額(賃金日額)の45%~80%(上限あり)です。
受給期間は、退職の理由や被保険者であった期間に応じて支給日数が異なります。
手続きの方法は、退職日の翌日以降に「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職票」を会社から受け取り、居住地のハローワークで「求職の申し込み」の手続きを行います。ハローワークで求職の申し込みを行った日から7日間の待期期間を経て、それ以降も失業状態が続いた場合に基本手当を受けることができます。自己都合等による退職の場合は、さらに1ヵ月間の給付制限がありますが、定年退職の場合または自ら教育訓練を受けた場合は給付制限がありません。なお、受給資格期間(基本手当を受給できる期間)は、離職日の翌日から原則1年(定年退職の場合はさらに最大1年の延長が可能)と定められているため、最初の手続きが遅れると、基本手当の支給日数が残っているにもかかわらず基本手当を支給できない、ということになる可能性もあるので、注意が必要です。
退職してすぐに老齢年金を受給できる方の場合、「基本手当」と「老齢年金」のどちらをもらうべきでしょうか?一概にどちらが有利とはいえないケースも多いですが、仮に完全リタイア時の月給が23万円(賃金日額約7,666円)だとすると、これに給付率(45%~80%)を乗じた基本手当日額は、少なく見積もっておよそ3,450円(45%の場合)となり、月額で約10万円となります。したがって、報酬比例部分の月額が基本手当よりも多い場合は年金受給を選択した方がおトク、少ない場合でかつ働く意思があるのであれば基本手当を受け取ったほうがおトク、ということになります。
万一、病気やケガのために障害者になってしまったときに、その障害の程度に応じて年金や一時金が支払われます。これを障害年金といいます。障害認定は初診日から1年6ヵ月後です。加入期間の3分の2以上が保険料納付済み(保険料免除期間を含む)であること、などの給付条件があります。
障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金があり、障害基礎年金は国民年金の第1号被保険者から第3号被保険者まで共通で受けられる年金で、障害厚生年金は第2号被保険者の上乗せ年金となります。なお、障害基礎年金は、老齢基礎年金を繰上げ受給している人には支給されません。また、障害年金の給付を受けていた人が60歳以降に特別支給の老齢厚生年金を受けられるようになったときは、両方を受けることはできませんので、いずれかを選択することになります。
障害の程度(障害等級)は、重い順に1級から3級まであります。
1級・・・・日常生活の用をすることができない状態で、常時介護を要する状態
2級・・・・日常生活が著しい制限を受ける状態で、適宜介護を要する状態
3級・・・・労働に著しい制限を必要とする状態
障害等級1級と2級は、障害基礎年金と障害厚生年金が同時に支給されますが、3級は障害厚生年金だけです。初診日から5年以内に病気やケガが治り、3級よりやや軽い程度の障害が残ったときには、厚生年金より障害手当金が支払われます。さらに、1級と2級には、所定の要件を満たす配偶者や子がいる場合、家族手当に該当する「加給年金」が加算されます。